初音ミクとプロとアマ

http://mediasabor.jp/2007/11/post_272.html


まず些末な点から。
アッコにおまかせ!」での取り上げられ方は、そもそも、基本的な情報が抜けていた。
初音ミク」を単純に紹介するなら、まずそれが歌を作るためのソフトウェアであり、それを利用した楽曲がネットで多く発表されており、初音ミクのキャラが人気である、という3点になるだろう。
その上での批判ならば、批判として受け止める向きもあるだろうが、実際の番組では、もはや、初音ミクが何をするためのソフトであるかもよく分からない有様だった*1


アッコにおまかせ!」は、さておくとして。それ以外の本文は、だいたい納得できる。


UGCが受ける理由の多くは、UGCであるからという理由。すなわち、隔絶したプロではなく、自分と同じアマチュアが作っているからという「共犯者意識」にあるだろう。そこにおいては、例えば、技量の未熟さが「親近感」として評価されることもある。初音ミクの楽曲も、大半は、その範疇ではある。


ちなみに、この「共犯者意識」「親近感」は、実は、プロやアマ、技量の上下とは関係しない。消費者に「共犯者意識」を持たせるのは宣伝の基本であり、「素人らしさ」を眼目にすえたプロモーションがどれだけ多いかも言う必要はあるまい。
プロであれば、物を売る際に、宣伝が、どれだけ重要かは当然理解しているだろう。


であるからUGCの大半を「素人の内輪受け」とするのは正しい一方で、プロであれば「素人の内輪受け」の怖さも分かっているだろう。そしてもちろん、ごく一部には、プロに匹敵する才能と鍛錬を兼ね備えたアマチュアが納得ゆくまで作り込んだ作品も存在するのだ。


もう一点。
初音ミク」というソフトは、単純に人間のボーカルの代替ではない。それは例えば、CGが、油絵の代替ではないのと同じであり、コンピュータミュージックが生演奏の代替でないのと同じである。


初音ミク」に代表される技術は「人間のボーカルと区別がつかない」方向にも進化するだろうが、「コンピュータにしか歌えない歌」にも進化してゆくだろう。
「人間のボーカル」vs「アマチュアの使う初音ミク」ではなく、「プロの使うボーカロイド」vs「アマチュアの使うボーカロイド」となってゆくことが予想できる。

*1:このへん、トロステーションでの紹介はさすがだった