なぜラノベ家庭には親がいないか

シミュレートしてみるとわかりやすい。

シミュレート

○設定(適当)
主人公:平凡な学生だったが、偶然であったヒロインに助けられ「契約」を結んだ結果、「刻印」を持つようになる。
ヒロイン:人外の存在と戦う定めを負った少女。人外に襲われていた主人公の命を助けるため「契約」を結ぶ。


○親がいない場合
主人公、夜中に起きる。刻印に痛み。触れると血。
主人公「くっ。この痛みは? あの子が危ない。いかなくちゃ!」


○親がいる場合
主人公、夜中に起きる。刻印に痛み。触れると血。
主人公「くっ。この痛みは? あの子が危ない。いかなくちゃ!」
母「ちょっと、こんな夜中に何ごそごそしてんのよ」
主人公「いや、あの……」
母「試験近いでしょ。早く寝なさい。それともお夜食? なんかあったかしらねぇ」
主人公「いや、ちょっと出掛けないと」
母「どこいくつもりよ。馬鹿なこと言ってないで早く寝なさい」
主人公「あの子が危ないんだ。刻印が!」
母「なにそれ、刺青じゃない!? ちょっと、お父さん、おとうさーん」
父「何やってんだ、全く。明日会社あるんだぞ」
母「この子、知らない間に刺青入れて、それで夜中にこっそり出掛けようとするのよ」
父「なに、本当か?……おまえ、ちょっと、そこ座れ」
主人公「……」

両親の機能

おわかりいただけただろうか?


まず、まっとうな親がいたら、息子が危険なとこに出掛けようとしたら止める。息子と話し合って状況を理解したら、警察を呼ぶなり自分達も手伝うなりする。その時点で、「少年少女が活躍する話」ではなくて「大人が頑張る話」になる。


それでなくても両親というのは、これ以上ないくらい日常を想起させるキャラなので、下手に両親を出すと、築き上げた非日常のリアリティが全部ギャグになってしまいかねない。


ラノベの王道は、読者の感情移入対象である少年少女が、大きな事件に立ち向かう話である。故に、少年少女が大人をさしおいて、大きな事件に立ち向かう必然性が要る。
そこにおいて、普通の両親は邪魔になりやすいので、いないことにするのが技法の一つだ。


「非日常の大きな事件」に立ち向かう話以外でも、主人公が色々な行動をする時は、両親の存在は邪魔になりやすい。


もちろん、常にいなくすればいいというわけではなく、やりかた次第で普通に両親を登場させつつ、面白いラノベを書くこともできるだろう。